BARISTA BOX

Weekly Coffee Commentary.

No.9

INAMBARI

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No.9-24 INAMBARI


国:ペルー

標高:1400-1900m

エリア:プーノ県サンディア、アルト・イナンバリ

品種:カトゥーラ、ティピカ

生産処理:フリーウォッシュド

生産者:400名の小規模生産農家

プロファイル:マンダリンオレンジ、イエローピーチ、ブラウンシュガー


南部峡谷

ペルーは日本の約3.5倍と大きな国で、南北を巡るアンデス山脈に沿って国土のほぼ全域でコーヒーの生産が行われています。古くからコーヒー生産が行われていた、北部のカハマルカ、アマゾナス、中部のチャンチャマヨ地区が有名。今回ご紹介するのは南部のボリビア国境と接している高地、プーノの山奥・サンディア渓谷の一部であるアルト・イナンバリのコーヒーです。この地域はボリビアに近いこともあり、ケチュマラ大語族とも言われるケチュア語族やアイマラ語族といった中央アンデスの主要な語族の人々が暮らしています。


プーノ

このエリアのコーヒーは、ペルーの他の地域とはコーヒーの出自が全く異なるのが特徴です。もともと標高3800m近辺のチチカカ湖近郊に住んでいた人々は、1930年代にラニーニャ現象の影響を受け土地の肥沃な「低地」を求めました。(ここでいう低地は1800mの高地です)。そうして、移住したサンディア渓谷エリアでは、ボリビアのユンガス地域で働いていたアイマラ族の労働者により、コーヒーの木が植えら、現在に至っています。そのため、栽培方法や品種はボリビア由来のものが多く、在来種の割合が多いためかそのフレーバーはエキゾチックさを増します。


イナンバリ

イナンバリは、プーノ県サンディアのアルト・イナンバリあるコーヒー生産者組合です。秘境とも言われる厳しい自然環境の中で、フェアトレードなどの認証コーヒーをメインに、社会性や環境に配慮しながら生産農家の成長を促しています。1967年に設立されたイナンバリ農協は、1400-1900mの高地に暮らす400名の小規模生産者によるコミュニティです。この地に暮らす人々は、インカ帝国の時代からアンデス山脈に根付くケチュア語族出身。3世代にわたってコーヒーの生産を継承してきました。収益を得る仕事という側面だけでなく、コーヒー生産自体がこの地域の伝統や文化を守り促進させると言い、「この土地の香りが漂うコーヒー」を合言葉に、高品質なコーヒー生産を行っています。

  • 12月 第1週目 コーヒー栽培の歴史

No.10

El Diamante

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No.10-24 El Diamante


国:ホンジュラス

標高:1700m

エリア:インティブカ県マラグアラ、ポッソ・ネグロ

品種:ブルボン

生産処理:ウォッシュド

生産者:フランシスコ・アルヴァラード

プロファイル:ダークチェリー、アセロラ、ビターチョコレート


モンテシージョエリア

ポッソネグロ村は、インティブカ県北東部マサグアラ近郊にある山岳地域の農村です。ラ・パス県とインティブカ県の谷あいに位置し、この山間部に多くのコーヒー農園が点在します。北東向きの斜面に面したこの地域は、ラ・パス県のサンチアゴ・デ・プリングラとは県を跨いで向き合うような高地となり、同じモンテシージョ山脈系のエリアとしても異なる風味特性を持っています。気候は18-25℃と涼しく、標高1700-1800mの高地に多くの小規模生産者の農園があります。生産区分においてはモンテシージョエリアに分類されますが、モンテシージョ山脈に点在する山々は、それぞれ日商条件や気候条件、標高なども異なり、コーヒーの風味においても多様性があるとされています。ポッソネグロは、雨季と乾季のはっきりとした気候と日照量の豊富さ、乾燥した土地が特徴で、濃厚な甘さとフルーティで厚みのあるフレーバーが特徴です。


エル・ディアマンテ

エル・ディアマンテ農園は、コーヒー生産者であるフランシスコ・アルバラードさんがこのポッソネグロで2010年ごろに購入した新しい農園です。ホンジュラスにおいては、さび病や価格の低迷から、各所で農園放棄や農業離れが深刻な問題でもあり、エル・ディアマンテも、そうした農園の1つでした。ポッソネグロは、ちょうどその頃にCup of Excellenceでも優秀な成績を収めており、スペシャルティコーヒーにおいて注目を集める産地の1つでした。アルバラードさんは荒れ果てていたこの農園に目をつけ、一からリノベーションを施し最高のコーヒー作りに向けて動きはじめます。農園は彼が家族と暮らす家からは離れていましたが、家族が献身的に農園に通い、多くの改良・努力を続けた事で素晴らしい風味を兼ね備えたチェリーが収穫できるようになりました。特に土壌においては入念に成分分析を行い、スケジュールに基づいて7月-10月-12月の年3回の堆肥投入が行われています。選定は開花する3月~4月に掛けて1本1本丁寧に行い、木のコンディションを毎年しっかりと管理しています。そうして実ったチェリーは、土壌の栄養を存分に貯え、赤々と均一に成熟して収穫を迎えます。現在は農地を広げながら、特別な品種の生産も実験しています。

  • 12月 第2週目 カフェの歴史

No.11

Mondul

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No.11-24 Mondul


国:タンザニア

標高:1700m

エリア:アルーシャ近郊

品種:N39、KP423

生産処理:ウォッシュド

生産者:ハンター・フリント

プロファイル:レッドアップル、キャラメル、ミルクチョコレート


キリマンジャロ

「タンザニアコーヒー」と聞いてもピンとくる人は少ないかもしれませんが、「キリマンジャロコーヒー」と聞けば知っているという方も多いのではないでしょうか。日本ではおなじみの高級ブランドコーヒー「キリマンジャロ」は、野生味溢れると表現されるほどの突き抜ける酸味特性があり、その爽やかさが世界のコーヒーファンを虜にしてきました。キリマンジャロは特定銘柄として指定されている特別なコーヒー豆です。ブランドの定義を《タンザニアで生産されたアラビカ種コーヒー豆のことを指します。ただし、ブコバ地区でとれるアラビカ種コーヒー豆だけは含まない。》と定め、厳格な基準を設けています。


イタリアの血

この農園は1931年、イタリア人のコント・ダヴィコさんによって開拓されました。1922年ダヴィコさんが22歳の時、兄が新婚旅行中にウガンダで亡くなったことをきっかけに、東アフリカを訪れました。そこでアフリカの美しさに魅せられ、そのままアフリカ開発会社に就職。その後ファミリーの援助を受けて、この土地を購入しましたが、第二次世界大戦後にタンザニアは社会主義化の波にのまれこの土地を没収されてしまいます。1952年に返還を受け、ダヴィコさんは再開拓を開始。残念ながら農地整備途中の1983年にダヴィコさんは亡くなってしまいましたが、息子兄弟のコラドさんとルジェロさんが「特別なコーヒーを飲みたい人に供することができる、良質なコーヒーを作る」という父の遺志を継いで同農園を経営してきました。現在は、バルカ・エステート社に農園経営を委託しています。


生産環境

コーヒー生産に理想的な海抜1650~1840m、水はけがよくミネラルが豊富な火山灰層、腐葉土と地下水の恩恵を受け、シェードツリーの作る涼しい日陰の中でケント種(ティピカ種×ブルボンの配合種)が栽培されています。イタリア人ならではの近代的な生産手法、品種の限定、剪定のサイクル化など、長年の努力の結果、1999年見事タンザニアコーヒー協会のコンクールで金賞を受賞しました。農園には植木職人が常駐していて、カット1年未満、1年後、2~3年後、翌年カット予定の4グループに分けて収穫サイクルを設定することで、効率と品質の両立を図っています。レッドカラントやリンゴ、アプリコットなどの華やかな風味、カラメルのようなアロマとミルクチョコレートのような甘さなどの風味を感じることができます。

  • 12月 第3週目 コーヒー豆の構造

No.12

Inmaculada

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No.12-24 Inmaculada


国:コロンビア

地域:カウカ県 ポパヤン地区近郊→ヴァージェ・デル・カウカ県 カリ市郊外

標高:1,650m

品種:カツーラ、カスティージョ

生産処理:ナチュラル

プロファイル:アプリコット、プルーン、ラム


ブレイク

コロンビア ヴァ―ジェ・デル・カウカ県より、単一農園であるホルグイン家が生産・精選方法に工夫を重ねたハイパフォーマンスロット。インマクラーダ農園はコーヒーの世界で初めて精選方法にカーボニックマセレーション(嫌気性発酵)を導入し、 2015年のWBC世界チャンピオンであるSasa Sestic氏もその豆を使っていることで名を馳せた農園です。更に2022年にミラノで行われたバリスタチャンピオンシップでは1~3位の競技者がインマクラーダを使用したことで、一気に知名度が上がりました。

 

少数精鋭

この農園の規模はかなり小さく、近隣の栽培可能面積も非常に限られているのが現状で、農園としての生産量の拡大は残念ながら望めず、自社農園のゲイシャ種“Signature”、“Family Reserve”の2商品の品質向上、安定生産という2点に注力していく他ありません。ただ、彼らとしては多くの正規従業員を抱えるこのプロジェクトをより安定的に、より多くの従業者にとって安定した生活をもたらす取り組みにしたいという思いがあります。それは日雇いのピッカー等を使わず全ての従業員をフルタイムで雇用すること、テクノロジ―を活用しながら徹底的に管理していることからも垣間見えます。そんな中、独自で積み上げたメソッドでコーヒーの可能性を表現していきたいと取り組みを始めたのが、以下の“Fellows”プロジェクトになります。

 

量より質

拡張性に乏しく、良いノウハウを持っていながらも生産量が極小とならざるを得ない同農園が、協力する生産者団体と、地域を巻き込んで安定的な収入と高品質なコーヒーをもたらすべく始まったプロジェクトが“Fellows”です。北部、カウカ県に位置する協力生産者団体から毎朝チェリーを調達し夜に同社設備搬入、独自で設定している熟度のチェリーをマーケットより40%高値で購入(集荷日はマーケット価格を手渡しし、週末にボーナスとして支給)し、同社の設備、ノウハウで精選し品質管理を行う、新しいプロジェクトになっています。彼らの設定している基準に満たす協力生産者団体の選定、実現までにもかなりの時間を要しており、 また良い熟度のものは高値で取引している反面、その品質感に満たないものは市場価格よりもかなり低い(この分はFellowsとして流通させない)価格で買い取るシステムのため、十分な収入を得るためには、生産者団体もいわゆる一般的なスペシャリティコーヒー基準よりもよっぽど厳しい品質基準をクリアする必要があります。つまり、チェリーの生産において“普通に高品質”として作られたものでは不十分で、インマクラーダ基準の品質であるということになります。


唯一無二

農園が位置するカリ市郊外の山間部には3体の処女像が建てられており、その中のひとつが原罪の汚れや咎をもたない聖母マリア(ラテン語でImmaculata Conceptio Beatae Virgins Mariae)であることから、神の恵みを受けた穢れのない純真無垢で誠実な農園でありたいという願いを込め、そのスペイン語名であるInmaculadaを、全ての区画の総称ブランドとして掲げております。営農を始めた当初は、1,650~1,750mの部分であるJardines(ハルジネス)区画のみしか所有しておりませんでしたが、より良いコーヒーの生産を目指し、さらに高い1,750m~1,850mのInmaculada(インマクラーダ)区画とMonserrat(モンセラット)区画、そして最後に最高標高部分であるLas Nubes(ラスヌーベス)区画を取得し現在は4つの生産区画を有しております。コーヒー生産者としては新興農家であることから、自分たちだからこそ作りうる特徴的なコーヒーを目指し、初期のころから希少品種を実験的に植え、生産から精選に至るまで、多くの工夫を行っております。精選においては外部の知見も借り、世界で最初にカーボニックマセレーションをコーヒーに取り入れたり、ウォッシュ主体のコロンビアでより自然環境負荷の少ないナチュラルを行ったりと、品質向上に常に前進的な意欲を見せます。

  • 12月 第4週目 カッピングに挑戦

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