BLACK BOX

Weekly Coffee Commentary.

No.5

AQUIARES

Brand Information ☝️"tap"

No.5:AQUIARES


地域:コスタリカ カルタゴ州 トリアルバ アキアレス地区

認証:RA認証

規格:SHB EP

品種:カツーラ、カツアイ、カティモール

標高:1,200~1,350m

生産処理:ウォッシュド

生産者:アルフォンソ・ロベロ

プロファイル:オレンジピール、キャラメル、シナモン


 アキアレスという言葉は現地語で「島」という意味です。農園内には、3本の大きな川を始め、4つの湧き水、31の小水路があり、空から見ると川が土地を分断し島のように見えるため、このような名前がつけられました。美しい自然風景と、地域に支えられる暖かな雰囲気が農園全体を覆っております。豊富な湧き水はコーヒーの木々に豊富な灌漑水をもたらし、コーヒーの精選工程で発生する汚水や生活廃水もきちんと浄化され還元されていて、まさに「水と生きる農園」と言えます。


RACM認証

 農園内の105haは熱帯雨林に覆われ、2003年度クロップという非常に早い時期よりRA(レインフォレストアライアンス)認証を取得。2012年にはRA農園の中でも森林破壊や農業生態系の破壊を防ぐことに努め、地域の環境や気候に対して特に配慮している農園に認められるRainforest Alliance Climate Module(Friendly)認証をコスタリカで初めて取得しました。アキアレス農園は地球環境に対する配慮だけにとどまらず、公的資金をうまく取り入れて地域コミュニティに還元していて、農園経営の一つのモデルケースとして成功しています。農園が提供した敷地内には学校、幼稚園、住居、病院等があり、建物自体は保険省や大統領名での寄付等で建設されています。学校や幼稚園の運営費も住民の寄付が柱となっています。特に農園で働く人たちにとっては、近くに子供を預けられるため安心して働ける環境にもなっています。またアキアレス地域には426軒の住居、1,500人の住民が暮らしていますが、住民の内95%が持ち家であり、この住居用の敷地もアキアレス農園の寄付によるものです。


東京ドーム141個分

 アキアレス農園は国のほぼ真ん中にある首都サン・ホセから南東に約60km、車で1.5時間ほどの山あいの場所に位置する、カルタゴ州トリアルバ、アキアレス地区にあるコーヒー農園。この農園の最大の特徴は、なんと言ってもその規模。単一農園としては「コスタリカ最大」の農園で、農園名がそのまま地域の名前になっているほど、このコミュニティの象徴的な存在です。農園総面積924HAのうち、660HA(約東京ドーム141個分)にコーヒーが育てられ、残りは自然保護区域として整備。収穫期には最大1,500名ものスタッフが動員され、総収穫数量は18,000袋を誇ります。ちなみにコーヒー農園自体は、標高900m~1,350mの斜面一体に広がっていて、日本向けに入荷するロットは標高1,200m以上の区画のみに厳選。農園内の105haは熱帯雨林に覆われており、2003/04年産からという非常に早い時期よりRA認証を取得。2012年にはRA農園の中でも森林破壊や農業生態系の破壊を防ぐことに努め、地域の環境や気候に対して特に配慮している農園に認められるRainforest Alliance Climate Module認証をコスタリカで初めて取得。まとまりの良さ、やわらかいかんきつ感、透明感のあるアフターに仕上がっています。全体的にクリーンな印象で、シナモン系の質感がほのかに感じられる、スペシャルティコーヒーらしい輪郭のハッキリしたテイストが魅力の一杯です。

  • RACMの実力

No.6

Passeio

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No.6:Passeio


国:ブラジル

標高:1100〜1200m

エリア:南ミナス モンテベロ

品種:イエローブルボン

生産処理:パルプドナチュラル

生産者:アドルフォ・エンリケ・フェレイラ

プロファイル:オレンジ、マカダミア、ミルクチョコレート


生きた土

 パッセイオ農園は、南ミナス地区のコーヒー生産地帯のほぼ中心に位置するモンテ・ベロに位置しています。標高1100mから1200mのなだらかな場所に農園が広がり、火山性ミネラルを含んだ肥沃な土壌に恵まれています。火山性の土は透水性と保水性に優れていて、栄養素となる有機物やリンを良く吸着するという性質を持っています。コーヒーノキに十分な水分と栄養素を安定的にもたらし、色付きの良い熟した大粒の実が育ちやすいと言われています。


イノベーション

 植付けのための土壌整備からコーヒーチェリーのピッキングまでの全作業は、訓練を受け卓越した技術を持つ作業者を効率的に活用することから成り立っています。パッセイオ農園は3世代にわたりコーヒーの生産を行ない、そのつど生産技術を更新、効率性と品質の向上を追い求めています。自然環境に対する配慮も抜群で、敷地内に75Haの自然林を残しつつ、生態系のバランスを見ながら農薬の使用量を調整しています。作業者の生活、教育環境の整備等社会問題の解決にも積極的に取り組み、人と自然の共存社会の実現に努めています。


先駆者

 生産処理ではナチュラル・パルプドナチュラル、品種ではムンドノーボ、ブルボンと多様な商品をそろえ、COEやLate HarvestCompetitionといった国際品評会の常連として、世界のスペシャルティコーヒーのロースターに知られています。COEの前身であるITCのグルメコーヒープロジェクトの農園として1997年に初めて「水流によるチェリーの比重選別機」と「グリーンセパレータ」を導入したことも、パッセイオの品質に関するアドバンテージを維持する要素となっています。グリーンセパレーターとは、コーヒーチェリーに直接水圧をかけて果実から種子を押し出す装置のこと。未成熟なグリーンチェリーのように硬い実は種子が中から飛び出すことができず、自動的に排除されます。この装置の発明によって、コピルアクなどで有名なジャコウネコによる選別は意味をなさなくなったと言われています。


これぞスムース

 明るいオレンジやグリーンアップルを感じさせるフレーバーやアーモンドのような香ばしいアロマ、ミルクチョコレートのような甘さと、ブラジルスペシャルティコーヒーの定番に相応しい風味特性かと感じます。また、明るい酸、マウスフィールの滑らかさにも優れ、パッセイオらしい高地産コーヒーの利点や手間を掛けた選別によるクリアなカッピングも感じることができます。


  • コーヒー界の重鎮

No.7

El Roblar

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No.7:El Roblar


国:ホンジュラス

標高:1630-1670m

エリア:コマヤグア県サンセバスチャン、ラ・ペニータ

品種:イエローカトゥアイ

生産処理:フルウォッシュド

生産者:ロサ・ディマス・フネス・マシアス

プロファイル:シトラス、グリーンアップル、プルーン


始まりは、木の棒

 コマヤグア県南部のラパス県との県境に位置するエル・ロブラル農園。標高1500-1700mの高いエリアで、北東の谷あいから来るカリブ海系の暖気と山からの冷気が重なる土地で、比較的雨量も多く寒暖のバランスに優れた微気候をにあたります。エル・ロブラル農園は夜間15℃まで冷え込み、標高以上に寒暖差が特徴です。また、肥沃な土壌で砂状の石灰質土壌と粘土質な土壌が混ざり、根張が良く保水性&水はけの良さを両立しています。農園は、ロサ・ディマス氏の父の代から50年以上の歴史を持ちます。先代が生産を始めたばかりの頃は設備もなく、木の棒で果肉除去をし、自然の岩の上をパティオ(乾燥台)にして乾燥させ地元の市へ売りに行くというからスタートしました。2010年ごろからスペシャルティーコーヒーの生産へシフトし、2012年にはCup of Excellenceを初めて受賞。2009年まで1Ha だった農地も、この10年で10Ha まで拡張し、現在はロブラル農園とロブレ農園の隣接する2区画で生産をしています。


環境がコーヒーをつくる

 エルロブラル農園では土壌や木々のケアを第一に考えています。肥料、手入れ、シェードツリー(直射日光をコーヒーノキに当てないようにするための樹木)の調節には特に気を遣い、毎年熟度の高いチェリーを収穫しています。シェードツリーとして農園にそびえ立つ樫の木(ロブレ)はブランド名の由来であり、農園のシンボルでもあります。こうして育てられたチェリーをカップクオリティの高いコーヒーにするために、生産処理において使用する全ての機械・器具のメンテナンスも徹底されています。近年では、泥の混ざらない綺麗な水で生産処理を行えるように貯水槽を作り、発酵槽も木製からコンクリートへ切り替えるなど、品質向上に向けて衛生面も強化してきました。肥料は、5月7月9月に既製の肥料を3回投入。そのほか、カルシウムやパルプで作った自家製の弱酸性肥料を8月に撒き、莫大なコストを掛け土壌の維持保全に努めています。


究極のウォッシュド

 乾燥工程に使うビニルハウスのアフリカンベッドや、ナチュラル専用のパティオ(乾燥台)の設置など毎年設備投資を行い、品質のアップデートを絶えず行っています。特に農園のベースとなるウォッシュドプロセスは、何度も改善を重ねて現在のクオリティに至っています。今回のイエローカトゥアイは、収穫時点でのピッキングがクオリティに大きく影響するため、その精度には非常に神経質に取り組んでいます。チェリー収穫後はそのまま2回の水洗を行い、フローター(水に沈まない浮豆のこと。未成熟豆や虫食い豆は健全豆より軽くなっているため水に浮く。カップに混ざると渋味やエグ味の原因となる)や異物の除去、チェリーに付着した微細な汚れを徹底的に落としています。果肉除去を行った後は、新たに作った貯水槽の綺麗な水を使い、24時間前後の発酵工程を経てミューシレージ(コーヒー種子にまとわりつく粘液質の糖分)を取り除き、15日かけてスロードライ。現在もこの発酵工程は試行錯誤が続いていて、発酵時間や層の厚さ、日陰・天日など各シチュエーションのデータを蓄積し、クリーンで複雑な風味を引き出すムラの無い発酵を目指しています。オレンジやプルーン、グリーンアップルなど複合的な風味の要素が感じられ、複雑さに長けたコーヒー。明るさや甘さ、果実味など全体に不足する印象がなく、コマヤグアのエル・ロブラルらしい充実した一杯に仕上がっています。


  • 木の棒から始まった物語

No.8

Monte Blanco

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No.8:Monte Blanco


 国:コロンビア

地域:ウィラ県 アセベド市 ラ・トコラ村

品種:ゲイシャ

標高:1,730m

加工方法:コールドウォッシュド

生産者:ロドリゴ・サンチェス・バレンシア

プロファイル:ジャスミン、アールグレイ、キャラメル


Yara Champion Program 2017 :優勝

Yara Champion Program 2018 :準優勝

Roasters United 2019:優勝

Roasters United 2020:3 位


若き経営者

 ウィラ県南部モンテブランコより、様々な精選方法を意欲的に行う若きコーヒー生産者ロドリゴ・サンチェス氏が手掛けたゲイシャ種が到着。モンテブランコ農園の現オーナー=ロドリゴ・サンチェス・バレンシア氏は、祖父から続く伝統ある農園を複数経営し、あらゆる賞を獲得してきました。彼はモンテブランコ農園を皮切りにウィラ県の周辺地域に複数農園を買収し、木の発芽から栽培、収穫、精選、輸出までの全過程をまとめて主導しています。農園の気候は平均気温は16℃~22℃、日照時間は年間1,700 時間で、コロンビアの平均に比べ300 時間ほど長くコーヒーの木に光に当てることが出来ます。また、農園内には自社でウォッシングステーションやパルピングを行うためのウェットミル、放射状に広がったアフリカンベッドを使用した乾燥設備に加え、今回の特殊精選を行うための低温発酵用として10~14℃設定された冷蔵室や通常の嫌気発酵を行うタンクだけでなく、ナチュラル精選の発酵に特化した専用のタンクも完備。




ゲイシャ種

高級コーヒーのひとつとして知られるゲイシャ種。希少価値が高く、風味の優れた品種として世界でも注目されています。特徴的な名前は植生が確認されたエチオピアのゲシャ村からきており、元々はゲシャ種と呼ばれていました。これがどこかで訛りゲイシャ種となり今に至ります。2000年台から注目を集めている品種で、唯一無二の風味特性があるため大変人気が高いコーヒーです。一方、樹の背丈が高く病害虫にめっぽう弱いため、栽培がとても難しいという面も。実らせるチェリーの数も少なく、コストに比べて生産性が低いため貴重なコーヒーとなっていて、常に高額で取引がなされています。生育しやすいよう何度も品種改良されるのが一般的なコーヒーノキの中で、ゲイシャ種は原種に最も近いコーヒーだと言われています。収穫量が少なく、育て方の難しいゲイシャ種を栽培する農園は多くありません。高収穫量の品種を育てた方が利益につながることや、繊細な技術が必要とされるなどが理由。また、栽培に適した環境が限定されてしまうためでもあります。限られた農園でのみ栽培されることもあって、ゲイシャ種はコーヒー通の間で神格化されるようになっていきました。ゲイシャコーヒーといえば、まずはその香り。コーヒーパフューム、エキゾチックフレーバーと言われるほどのフローラルなアロマが特長です。ジャスミンやアールグレイのように甘く爽やかで、華やかな香りが漂います。オレンジなど柑橘系のフレッシュな酸味も魅力。そしてなにより、はちみつ、メイプルのような濃厚な甘みが、世界のコーヒーファンを虜にしています。





コールドウォッシュド

 コーヒーチェリーを収穫後、パルパーにかけて果肉を剥ぎ取っていきます。中から出てきたヌルヌルで糖度の高い粘液質がまとわりついた種子を、微生物と一緒に発酵槽に漬け込みます。中の水温を12℃以下の冷たい状態に保ち、通常48時間程のところを76時間かけてゆっくり発酵させます。発酵中の水温を通常よりも低温に保つことで発酵がゆっくり進み、クリーンでより強い甘みのあるカップを生み出します。このプロセス(生産処理)は「コールドウォッシュド」と呼ばれ、コロンビアを始めホンジュラスやコスタリカなど中南米の国で試験的に行われています。発酵中に発生するガスを利用して甘味を浸透させるアナエロビックファーメンテーションより、さらにコストがかかるためより希少になっている特殊ロット。


  • 最高級、ゲイシャ。

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