BLACK BOX

Weekly Coffee Commentary.

No.1

Huevo de Oro

Brand Information ☝️"tap"

No.1-24:Huevo de Oro


国:ホンジュラス

標高:1800m

エリア:ラ・パス県ラ・パス、テパングアレ

品種:ブルボン

生産処理:ウォッシュド

生産者:マルヴィン・メヒア

プロファイル:オレンジ、パイナップル、クローブ



名産地ラ・パス

ラ・パス県の中心都市であるラ・パスから北上。コマヤグア県との境にあるのがテパングアレエリア。ちょうど盆地を見下ろすように山が立ち並んでおり、カリブ海側からの風を受け、20-25℃程度の比較的に温暖で乾燥した気候です。やや乾季が長く、収穫時期や開花時期も他のエリアに比べやや早く収穫は1-3月、開花も収穫後の3月から始まる特徴を持ち、主に1500-1700m付近でコーヒーが生産されています。土壌は酸性にやや傾いており、石灰や海藻系のアルカリ性肥料をメインに土壌バランスを整えています。また、風通しと日照に優れている生産エリアでもあり、乾燥やチェリーの成熟の面で優位性を持っているのも特徴です。ICAFEのエリア区分ではコマヤグアエリアだが、特徴としてフローラル、プラムやオレンジなど思わせる華やかなフレーバーに少しスパイシーな印象があり、濃縮した甘さや香ばしいアロマを感じます。



助け合い

マルヴィン・メヒア氏は、このテパングアレの地域で長らくコーヒー生産を行ってきた家系の生まれです。曾祖父から両親、兄弟へいくつかの農園が受け継がれ、兄弟が力を合わせてそれぞれの農園でコーヒーを生産しています。兄のアベル・メヒアは、テパングアレ農園を受け継ぎ、ウェットミル(果肉の除去施設)を作り、自身の農園だけでなくウェットミルを持たない近隣の農園のためにプロセスの代行も行っています。弟のマルヴィンも、ウェットミルを手伝いながら、2017年に母から2.5Ha土地を受け継いで、農園づくりを開始しました。IHCAFEの元品質管理責任者で、現在ホンジュラスのスペシャルティコーヒーの輸出と農園への技術指導を行っているRagaCafeのロニー・ガメス氏からスペシャルティコーヒーの生産を学んでいたマルヴィンは、同時期に近隣のククルチョ農園やオスマンサス農園、またウェットミルの建設など他のオーナーの農園づくりを手伝っており、コーヒー生産における様々なノウハウを得て、自身のウエヴォ・デ・オロ農園に経験を投じてきました。



手作りの農園

農園づくりは兄弟の農園での仕事の合間を縫って、ロバに苗木を積み毎日のように、獣道を往復しながら斜面の整地と植樹を地道に行い、また翌年以降は水道を通し、レンガを運び、小屋を建て、また、数人がかりでウェットミルを運びこみ、年単位で自力での建設が行われました。そうして、マルヴィンの並々ならぬ努力と、兄弟や仲間の支えによって、ウエヴォ・デ・オロ農園は出来上がりました。若い頃は、苦労を惜しまずに勤勉に働きなさいという父の教えだと、笑いながら語ります。今現在も肥料や剪定、収穫、プロセス、乾燥といった一連のコーヒー生産の仕事は、家族8人が団結して、皆が最高のコーヒーを作れるように支え合っており、家族はマルヴィンの誇りでもあります。彼らが作ったミルには、家族だけでなくプロセスを依頼する多くの生産者やバイヤーが自然と集い、皆で談笑し、歌を歌いながら、共に苦労をねぎらい、将来の話を語り合っています。マルヴィンもウェットミルの能力をより使いこなせるように、将来的には農地を拡張していきたいと語ります。



ジューシーで複雑

ラ・パスでも1800mという、最も標高の高いエリアでその地理的優位性を活かして、ジューシーかつ熟度が高く風味強度のあるコーヒーに仕上げています。生産処理はテパングアレ農園で培ってきたノウハウが生かされており、風味の複雑さ、エキゾチックさの際立つ、飲みごたえのあるコーヒーです。焙煎のレンジや抽出用途を選ばず、幅広く楽しむことができる銘柄です。


  • 人の手で創り上げた農園

No.2

Donas do Café

Brand Information ☝️"tap"

No.2-24:Donas do Café


国:ブラジル

標高:1100-1150m

エリア:南ミナス(ノーヴァ・レセンデ/カンペストーレ/アルピノーポリス)

品種:イエローブルボン他

農園名:プラタ農園、ポッセス農園、パルミタル農園、キタ農園

生産処理:パルプドナチュラル

生産者:4名の女性生産者

プロファイル:みかん、サトウキビ、ヘーゼル


Project

Donas do Café(ドーナス・ド・カフェ)は、長年ブラジルのスペシャルティコーヒー市場をけん引してきたSMC社とブラジルの大手農協であるCooxupéが中心となり、コーヒー産業に携わる女性たちの生活に変化を齎そうという目標のもと、2020年に立ち上がったプロジェクトです。これは、両社の組合員やパートナーに市場の情報提供や技術的トレーニング、カッピングを通した品質評価、そして農園の管理方法などのノウハウを提供し、時には農技師を派遣しフォローアップしながら女性生産者の成長をサポートするとともに、スペシャルティコーヒー市場についての知識を深めてもらおうという取り組みです。



女性生産者の活躍を願い

SMC社のマネージャーのマリア・ディルセイア・メンデス氏はBSCA(ブラジルスペシャルティコーヒー協会)の会長も務め、Caxambu農園のオーナーで大学の教授でもあったカルメン・ルチア・チャベス・デ・ブリト氏ら、ブラジルのコーヒー産業を支えてきた女性リーダーたちが先頭に立ち、自身の経験を伝え、コーヒー産業に関わる多くの女性がキャリアを形成できるように懸命に活動を行っています。ここ数年、コーヒー業界における女性の活躍は目覚ましく、彼女たちが生産するコーヒーへの需要も国内外で同じように高まっています。Donas do Caféプロジェクトは、彼女たちのスペシャルティコーヒー市場への参入を後押しし、強いパートナーシップを構築しながら、女性生産者の成長と活動の向上を支えていこうとしています。今回のロットは、そうしたDonas do Caféプロジェクトを通して活動する、女性生産者によって生み出されました。そして、彼女たちのスペシャルティロットがDonas do Caféの名を冠して、そのメッセージを強めて世界中に届けられています。



4人の生産者

プラタ農園(ノーヴァ・レセンデ)

マルレーニ・マガリャエス・バチアン氏が経営。コーヒー生産農家の娘として生まれたマルレーニさん。両親からコーヒー生産の全てを学び、現在は農園を継ぎ、家族で農園のコーヒー生産に従事、農園の中心的な役割を担っています。恵まれた気候条件や平坦な地形を味方につけ、厳選したコーヒーの収穫にこだわっています。



ポッセス農園(カンペストーレ)

ジュリアナ・ベルナデス氏が経営。コーヒー農家に生まれたジュリアナさんは、家族の手伝いをしながらポストハーベストに長年力を注ぎ、農園に貢献してきました。ポッセス農園は、彼女の知見と素晴らしいコーヒーを生み出すために夫と作り上げた農園です。コーヒーへの愛情をいつも大切にしています。



パルミタル農園(カンペストーレ)

エリザベティ・フランコ氏が経営。元々、教育分野で働いていたエリザベティさん。農園を営んでいた父からパルミタル農園を相続した事がコーヒー生産に専念するきっかけとなります。教育者のころから、父の仕事への姿勢が最大のお手本だったと語り、そんな父の残した素晴らしい農園を家族兄弟で受け継いで、父に恥じない素晴らしいコーヒーを作りたいと尽力しています。



キタ農園(アルピノーポリス)

タイアーニ・ミランダ氏が経営。農園で生産するスペシャルティコーヒーの品質、そしてその献身的な姿勢は、家族の誇りと語るタイアーニさん。彼女は農園の後継者として相応しい人物になれるように、大学で農学を学び、父の経営を手伝いながらキタ農園の未来を切り開くべく、日々情熱を注ぎ努力を重ねています。



素性の良さ

オレンジやミカンをおもわせるフレッシュなフレーバーとブラジルらしい香ばしさ、明るい酸の印象が特徴的でカップは非常にクリーン。サトウキビのようなさらっとした甘さも全体の風味傾向とバランスが良い。


  • Run The World.

No.3

Vale do Cristal

Brand Information ☝️"tap"

No.3-24:Vale do Cristal


国:ブラジル

標高:1250m

エリア:ミナス・ジェライス州セラード、ヂアマンチーナ

品種:サンタローサ(カトゥアイ選抜種)

生産処理:DOTナチュラル

生産者:トミオ・フクダ

プロファイル:マカダミア、キンカン、ブドウ



想い

トミオフクダ氏は30年来にわたってバウ農園を経営し、コーヒー品質と生産性の向上に取り組んできました。同時に、適地適作、コーヒー栽培に向いた土地に拡大することは長年のトミオさんの願いでもありました。しかしながら、ブラジルコーヒーの主要生産地とされるミナスジェライス州セラードでさえ、土地購入は非常に高い投資となる事から、近隣で良い農園を探すことは困難でした。そこでトミオさんはバウ農園の近郊にはこだわらず、これまでとは全く違うコーヒーを作るための土地を広く探し求めはじめました。ようやく見つけたのが、バウ農園から車で6時間以上離れた距離にあるジアマンチーナという町。バウ農園から東に500㎞、標高1250m、しかしコーヒー生産地としては全くの無名の地にある120ヘクタールの土地でした。バウの位置する所謂セラードの土壌とは異なり、土壌のpH値や肥効の良さが特に魅力的です。そして、この農園には大粒のクリスタルが地面に転がっていて、そこから「バレ・ド・クリスタル(Vale do Cristal)農園」と名づけました。2018年に植樹を行い、トミオさん夫妻はこの土地に常駐してコーヒーの木を育成。そして2022年に初収穫を迎えました。Vale do Cristal農園の開拓はゴールではなく、バウの成長の一部です。



ドライ・オン・ツリー

「 Dried On Tree(DOT)(ドライ・オン・ツリー)」は、コーヒーチェリーが熟してもあえて収穫せず、樹上でカラカラになるまで乾燥させるプロセスです。通常のコーヒーは実は摘み取って乾燥させる、もしくは水洗して種を取り出して乾燥させるという工程をとります。完熟果実のみを手摘みする方法もありますが、ドライオンツリーは完熟を通り越して黒くなるまで樹の上で乾燥までさせます。樹の養分をずっと吸い続けながらも、水分の蒸発とともに甘味が大きく増します。ただ、栄養を取り続ける分、樹には大きな負担がかかり樹の寿命は半分も短くなるという、非常にコストのかかるプロセス。乾期に全く雨が降らない気候特性を利用したBAU農園独自の製法で、トミオ・フクダ氏のコーヒーの代名詞として日本で、長年愛されてきました。バレ・ド・クリスタル農園では2022年にはじめての収穫をむかえ、日本向けにDOTを生産しました。樹上乾燥という特殊な収穫方法ゆえに、DOTは品種を選ぶ手法だと言います。乾燥時に風でチェリーが落下しやすい品種もあり、加えて病耐性や生産性など品種の適性を見極める必要があります。今回のサンタローサ品種は、レッドカトゥアイ種のコーヒーの木の中から優れたものをトミオ氏が独自に選抜した品種です。



未来向けて

Bauチームは、日ごろから絶え間ない向上を追い求めるように教育を受けています。現場では、この姿勢を「Kaizen 」と呼び、ゆるぎのない「5S」の文化とともにチームの一人ひとりの中に根付いています。革新や技術への投資も惜しむことなく行い、「People(人)」、「Plant(植物)」、「Process(過程)」の3つのPにフォーカスして仕事に取り組んでいます。Bauでは、従業員への指導を今のようにしっかりと継続したとしても、気候変動などの逆境により持続可能なコーヒーの生産はこれからより困難なものになるという見通しを立てています。しかしながらスペシャルティーコーヒーの生産と消費は、グローバルマーケットにおいて強いトレンドであることは確かで、Bauとしてもこの動きにこれからも即していきます。こうした需要の高まりに即座に対応するため、Bauでは現在、さまざまな品種や精選方法を用いた生産を拡大するための設備投資が積極的に進められています。



より明瞭に

バウ農園のムンドノーヴォDOTの生産を終え、ヂアマンチーナで新たに農園を構え、トミオ氏の集大成として生産するバレ・ド・クリスタルDOT。バウDOTと比較すると高地のテロワールの良さがあり、フレーバーの華やかさや酸の明瞭さなどが向上しています。変わらぬ香ばしいナッツのようなアロマや柑橘の風味、ブドウのような果実味のある風味などドライ・オン・ツリーらしいキャラクターも感じられ、良い方向で変化、魅力を増しているように思います。ココアやキャラメルのような甘さやラウンドなマウスフィールもカップの飲みごたえの心地よさに寄与しています。


  • 木の旨み、全てをこの一杯に。

No.4

San Sebastian

Brand Information ☝️"tap"

No.4-24:San Sebastian


国:グアテマラ

標高:1,750~2,000m

エリア:アンティグア地区

品種:ブルボン

生産処理:ウォッシュド

生産者:ホセ・ミゲル・ファジャ

プロファイル:ココナッツ、ヨーグルト、ハチミツ



乾きと甘味

アンティグアの産地の特色は、東側にアグア火山、西側にフエゴ火山とアカテナンゴ火山という、3つの山に囲まれた渓谷地形にあります。アンティグアの土壌はフエゴ火山が噴火した際の火山灰土壌で出来上がっており、鉱物資源が豊富に含んだ肥沃な土壌です。渓谷になっているため、低い湿度、強い日射、昼夜の寒暖差もあります。その上、火山灰土壌ゆえに水はけが良く土壌は常に乾燥しているため、その極度の乾燥状況がコーヒー豆に過度なストレスを与え、非常に甘みを強くします。ただ一方で、降雨量が少ないがゆえの灌漑設備の活用や、比較的首都圏に近い土地柄によるピッカーなどの人件費も高く、他のエリアよりも栽培コストが高くなる背景があります。



グアテマラの名門

サン・セバスティアン農園はアンティグアの中でも歴史が古く、1700年代後半からコーヒー生産に携わる名門「ファジャ家」が保有する複数農園のひとつです。その農園の中でも、標高1,750m付近から上の区画で収穫されたブルボン種のみを厳選。甘く香ばしい香りが特徴的です。アカテナンゴ山のやや北側よりの斜面に位置しており日射量が和らいだ環境にあるため、冷涼な気候環境下においてチェリーはじっくりと生育し、それが非常にクリーンで繊細な酸味や甘みを生み出すと考えられております。甘く切ない複雑な香り、ココナッツの様な甘さとヨーグルトの様なボディ感のある酸味が混在する多様性のある味わい。それが重量をしっかり保ったまま、余韻の長いアフターに繋がります。


  • 火山土壌の恩恵。

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